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若手の理学療法士がベトナム訪問で得たもの2

参加したSarah Bradyさんは、特に記憶に残った患者について、このように話します。
「ある患者の膝の中に、手榴弾の破片がありました。これはどうしたのかと聞くと、アメリカ軍によるものだと答えました。それ以来、ずっとこの怪我を負っていると話しました。私は、治療を行なっていた手を、つい止めてしまいました。当初、彼女は、アメリカ人である私を信頼していませんでした。長い間向き合うことで、彼女は、私たちの手によって、その破片が取り出されることに対して、ポジティブな感情を持ってくれるようになりました」

教授と生徒たちは、期間中、地雷による長期的な怪我を負っている患者の多くに出会いました。
参加した学生の1人であるKeren Pintoさんは、特に難しかった症例をこう話します。
「最初の患者は、9階から転落した男性でした。彼は、外傷性脳損傷を受けていて、 私が見た中で、最も難しい症例でした。現地のスタッフと学生たちに、 脳卒中、外傷性脳損傷、および筋骨格損傷のリハビリを教えました。現地のスタッフたちは、患者を評価することをしていませんでした。私たちアメリカでは、リハビリの成果や結果で、患者に評価を行うようにしています。こうした違いも、彼らの学びになったのではと感じています」

リハビリトレーニングは、反復的に患者が行えるように、通常の生活に戻れるように、メニューが設定されます。患者は、朝8時から夕方4時まで、休憩を取りながら、リハビリに取り組みます。運動マシンを利用したり、障害物のある道を歩いたり、体の耐久性を強化するトレーニングをしたり、個人に合ったメニューが組まれます。

参加した生徒のSarah Bradyさんは、現地のリハビリに関して、このように説明します。
「患者の回復は、とても遅い場合があります。それでも、ルーティーンのように、反復的に毎日行うことが大切です。患者は病院に住んでいるので、新しい方法で治療することにハードルを感じやすい点があります。 言語の壁も、時には障害になりました。その中で、私たちは諦めずに、日々患者と向き合いました。私自身も、患者さんや現地のスタッフから、多くを学びました」

生徒たちは、この旅行で、さらなる技術と新しい視点を得ています。 Sarah Bradyさんは、旅について、このように感想を述べています。

「ある女性が、私を訪ねてくれました。その時の会話は、彼女の夫が通訳してくれていました。彼女は、私に、本当に助けてくれてありがとうと伝えてくれました。他の人に、その治療法は役に立たないと言われながら、彼女は私を信じて、治療を続けてくれていました。もっと彼女を理解してあげたいとも感じたし、こんな風に誰かの助けになれたことを、とても嬉しく思いました」

Beling教授は、Sarahさんが行った治療をこのように説明します。
「Sarahは、彼女にカッピングを勧めていました。私たちだけが治療をするのではなく、患者自身がどのようにセルフケアできるのかを踏まえて、常に治療を考えています。カッピングは、私たち西洋の治療方法ではありませんが、その方法が患者を助け、そして副作用を生まない安全な方法だと感じ、Sarahは治療に組み入れました。この行動自体が、Sarah自身、挑戦だったかもしれないし、それでも、結果的に、患者にとって良い治療こそが、私たちの考える理想の治療だと思っています」

Sarahには夢があります。将来、アスリートを支えるような理学療法士になることです。そして、Kerenにも夢があります。外来整形外科で働き、老化に関係する医学について、研究したいと考えています。

帰国したKerenは、学生仲間とともに、ラスベガスで開催された、全国理学療法学会で、自身の体験を発表しました。 Sarahは、American Physical Therapy Association(APTA)の出版物であるPulseの4月号にインタビューを受けています。

次の旅に参加する学生グループは、第1回博士課程の学生で、UCアーバインのバイオメディカルエンジニアである、David Reinkensmeyer博士と協力して、博士研究を行い、 慢性脳卒中を有する途上国の人々のための、共振アームデバイスを開発しています。

若手の理学療法士がベトナム訪問で得たもの

CSUN理学療法学科のJanna Beling教授は、文化能力と理学療法士の関係性について、このように説明しています。
「言語、生活習慣、文化、健康の信念の違いは、個人の健康管理や、医療関係者の患者に対する治療の選択に影響を及ぼすでしょう。私たちCSUNを卒業した理学療法士の生徒が、様々な文化の違いに触れ、常に多くの選択肢を持つように心がけてほしいと思っています。そのために、多くの経験を生徒に課しています。最終的な目標として、患者の治療に当たって、理学療法士として、しっかりと文化能力を持ち、最高のケアをしてほしいと考えています」

CSUNの生徒の視野を広げる一環として、教授と8人の大学院生が、カンボジアのシェムリアップとベトナムのダナンを訪れ、地元の病院の診察に参加しました。この3週間の長旅は、様々な多文化体験で構成されたCSUNのコースである、インターナショナル・フィジカル・セラピー(International Physical Therapy)の最終イベントとして設定されています。

CSUNのBeling教授は、2000年代初頭、理学療法士、医師、看護師、歯科医などが参加するNPO、Health Volunteers Overseasとともに、海外でボランティア活動を行いました。HVO教育を通じて、世界の健康状況を改善する目的で設立されたNPOです。

Beling教授は、HVOのベトナムの理学療法士プログラムのディレクターとなり、 2009年、CSUNの学生グループを、実践学習の機会として、ベトナムに連れて行きました。その旅行について、Beling教授はこう説明します。

「私たちが訪れた病院は、アメリカの状況とは異なるものでした。この環境が、学生たちのスキルを伸ばし、才能を発揮することができる学びの場になるだろうと考えています。生徒は、旅行期間中、教室でケーススタディを学んだり、ビデオを見たり、自分の背景や経験について、現地の市民と語り合うこともできます。理学療法士としての学びを超えて、異なる文化を体験します。これらの経験が、文化的能力を身に付ける1つの方法になるだろうと考えています」

Beling教授は、CSUNのキャンパスがある、ロサンゼルスに関して、こう話している。
「私たちは、ロサンゼルスという地域で学ぶことができて、とても幸運だと思っています。コリアンタウンの診療所でボランティア活動を行い、生徒たちは、自分とは異なる文化を持つ患者を診る機会に恵まれています」

Beling教授の活動は、医療従事者が、患者に対して、文化的に適切なケアを行うための積極的な議論を促進しています。 生徒たちは、通訳者とともに、治療の中で、患者に合わせた、効果的な方法を学びます。

Beling教授と学生たちは、アメリカのベトナムタウンでも活動を行なっています。教授は、生徒たが、民族的な要素で構成された、スーパーやレストランを訪れ、民族の多様性、食の嗜好、健康の信念、地域社会プログラムを実際に目で見ることが、重要だと考えています。

この旅に参加した、2人の学生、Keren Pintoさんと Sarah Bradyさんは、自身が経験したことについて、このように語っています。

「様々な治療方法に慣れている患者に出会い、自分自身もリラックスして、治療に専念することができました。患者1人1人が持つ異なる文化背景に触れながら、自分にとっても、彼らにとっても、お互いに新しい知識を得ることができました。彼らが健康にいいと感じることは、彼らにとって、実際に「健康」を生み出すものなのかもしれないし、それは自分にも言えるでしょう。相手のことを知らなければ、自分との違いに気づかず、治療を困難にする可能性があります。知ることができていれば、自分の知識を強化し、彼らとの食い違いを、事前に防ぐこともできます」

Beling教授は、この旅で、様々な国を訪れています。カンボジアでは、小児科の病院を訪れ、ベトナムでは、整形外科とリバビリテーション科を専門とする病院で、2週間のインターンシップを行いました。2009年以来、教授たちの活動の評判が広まり、訪問がテレビで放映されたことで、何百人もの患者たちが、教授と生徒たちの治療を受けたいと集まりました。この状況に、当時、教授たちも生徒たちも、とても驚きました。

教授と生徒たちは、現地の理学療法士や学生に対して、臨床指導を提供しながら、同時に、患者を支援することを、旅の使命として考えています。ある1日のスケジュールを例に挙げると、教授と生徒たちは、早朝、病院に到着し、現地のスタッフとの話し合いをして、その後、患者の治療を交代制で行います。「常にお互いが学べる瞬間を逃さないように、私たちは、よく観察することを心がけています」とBeling教授は語ります。

訪れた病院で、Beling教授と生徒たちは、患者のニーズを分類し、トリアージする作業に時間をかけていました。治療現場について、教授はこのように説明しています。

「本当に困難な状況が多い現場でした。学生たちは、その環境で治療を行うことで、神経学、整形外科、小児科、外来診療所、および補綴/整形外科の実践経験を十分に得ることができたと感じています。自宅でのケア、今まで見たことがない症例などに出会うことも、多くの知識になったと思っています。それらの経験を、各学生たちは日々ノートに書き留め、自分の経験と治療行為を客観的に理解し、反復的に治療と経験を積み上げて、自身のスキルや技術力の向上に役立てていました」

Beling教授と生徒たちが訪れた病院の多くの基準が、アメリカの基準とは、大きく異なっていました。看護師が薬を処方したり、家族が患者を世話したり(ベットシーツの取り換えや食事の世話など)、そんな環境に生徒たちは日々向き合いました。

カントー(ベトナム)で活躍する日本の理学療法士

カントーに住む、Nguyễn Tuyết Hạnh さんは、日本人理学療法士の治療を受け、長い間苦しんでいた体の痛みから解放されました。この日本人理学療法士は、ボランティアで治療を行なっています。

巧みな優しい動きで、若宮あきこさん(漢字不明)(29)は、肩に傷を負った、61歳のHạnhさんの肩の可動性を改善する治療を行なっていました。

メコンデルタ市のカンテン市出身のHạnhさんは、ある日、肩の痛みが悪化し、カンテ・トゥン総合病院に行きました。病院の医師から薬を処方され、痛みが消えるまで、理学療法士であるあきこさんの元を訪ねていました。

昨年の5月以来、病院の理学療法科とリハビリテーション科で活動していたあきこさんは、Hạnhさんの初期診断を行い、Hạnhさんに痛みの性質について尋ねていました。 あきこさんは、彼女の話を聞き、彼女自身に合った適切な治療法を選択しました。

あきこさんは、日本国際協力隊(JOCV)と協力して、1965年から、開発途上国の技術援助を行っています。

診察中であっても、あきこさんは、フレンドリーな態度で彼女に接しながら、治療によって痛みが生じていないかどうかを丁寧にチェックします。

「あきこさんは、本当に熱心に肩の怪我を治療してくれています。自宅で簡単にできる体操のやり方も教えてくれて、色々と助かっています」とHạnhさんは話します。

同じ職場に務める理学療法士であるHà Thị Minh Châuさんは、次のように話します。
「彼女は、患者の痛みや怪我をきちんと把握して、適切な治療法を選択する経験がとても豊富だと思います」

例えば、あきこさんは、脊髄損傷を患っている患者に対して、歩き始められるようになった後、腕と手の力を回復させるために、テーブルの上にある物を取り上げるトレーニングを勧めています。

この方法は、理学療法士が大学で教わる手法ですが、あきこさんが働き始めるまで、現地の理学療法士たちが、実際に「手段」として治療現場で活用することは、ほとんどありませんでした。

Hà Thị Minh Châuさんは、あきこさんから学んだことについて、こう説明しています。
「私たちは、考え方を変えることにしました。まずは、患者を観察した上で、患者に合った手段を選ぶようになりました。そして、治療すると同時に、患者自身が、自発的に治療に必要なトレーニングを行い、彼らが、社会復帰できるよう支援することにも、力を入れていきたいと考えるようになりました」

日本のセントマリアンナ大学病院で、6年間働いていたあきこさんは、Hà Thị Minh Châuさん達に、靭帯損傷患者に関する手術前後の運動推奨のアドバイスを伝えていました。
「運動は手術後だけ、という概念があったので、前後というアドバイスは、私たちにとって、とても新鮮で、新しい情報でした」とHà Thị Minh Châuさんは話します。

理学療法士チームの責任者であるNgô Thị Lanhさんは、次のように話します。
「あきこさんは、非常に勉強熱心で、心を込めて治療活動を行なってくれています。同僚にも、とても友好的で、ベトナムの仕事や、生活条件によく適応してくれています」

あきこさんが、ベトナムを選んだ理由は、ベトナムという国が好きで、その国に住む人たちの医療の質を向上させたいという願いからでした。患者がより良い治療を受けて、早く回復してもらいたいとあきこさんは願っています。

あきこさんは、理学療法士としての活動についてこう説明します。
「理学療法は、脳卒中の患者や、手術を受けた患者の治療として重要視されがちですが、他の状態にある患者の合併症の予防にも役立ちます。ベトナムの気候は暑く、私には心地良い気温ではないですが、この国の病院で働くことが好きです。ここで働けて、十分に満足しています」

あきこさんが働く病院では、ベトナム人の同僚たちが、患者とのコミュニケーションに困らないように、あきこさんを支えます。時には、あきこさんの生活面もサポートしています。

JOCVは、ボランティアに対して、技術的な協力を通して得られるであろう、喜びや発見、創造の機会を、組織を通して提供しています。現在、JOCVのボランティア活動は、農業、林業、漁業、加工、維持管理、土木工学、公衆衛生、教育、文化、スポーツの分野に協力が提供されています。プログラムのボランティア(20歳から39歳)は、2年間の間、協力活動に携わり、地域住民と一緒に生活し、働きます。

JOCVは、1995年以来、全世界の地方と都市に、500人以上の日本人ボランティアを派遣しています。